一日葬

葬式は通常、1日目に通夜,2日目に葬儀・告別式と、2日にわたって行われるのが一般的です。
しかし近年では、通夜を行わずに1日だけで儀式を完了する『一日葬』という形式の葬儀が徐々に増加しています。通夜を省き、葬儀・告別式から火葬のみを行う形式のため、葬式を通常の半分の期間である1日で終えられることが特徴です。

【一日葬の流れ】
❶遺体の搬送・安置
葬儀社が遺族の希望に添い、逝去した病院などから故人の自宅や葬儀社の安置施設などに、ご遺体を搬送し葬儀までの間、安置します。
遺体の火葬は、法律で死後24時間以上経過した後でないと行えないと定められています(一部の指定感染症で亡くなった場合を除く)。そのため死亡後すぐの火葬はできず、火葬前には基本的に一定時間以上安置することになります。
搬送・安置は、一般的には葬儀社へ依頼します。
❷葬儀社との打ち合わせ
葬式の日程やお寺への連絡,式場の選定,祭壇や棺などの内容の他、誰を喪主とするか,訃報の範囲,参列者の席次をどうするのかといった事柄についても、葬儀社の担当者と打ち合わせして決定します。
❸納棺
安置後、日時を定めて遺体を棺に納めます。
納棺に先立ち、湯灌や死化粧,死装束への着せ替えなどを行います。遺族や故人の生前の希望に基いて、一緒に納棺するもの(副葬品)なども納めますが、入れてよいものかどうかは葬儀社に逐一確認する必要があります。
❹葬儀・告別式
通夜を省いているので、葬儀・告別式にて全ての儀礼を集約します。菩提寺があれば、戒名などの授与があります(葬儀)。菩提寺がないなどの理由で宗教者を呼ばないのであれば、訃報連絡の範囲で一般の会葬者を迎え、焼香などを行います(告別式)。
❺お別れの儀・出棺
式が終了すると、故人との最期のお別れ(棺にそれぞれがお花を入れる)を行ってから棺の蓋を閉め、霊柩車で火葬場へ赴きます。
火葬場に同行しない『お見送り』の方々に対して、喪主から会葬の御礼などの挨拶を行い、式の終了が告げられます。会葬者は霊柩車を合掌にて見送った後に散会します。
❻火葬
火葬場(斎場と呼ぶこともあります)にて、遺体を荼毘に付します。
僧侶が同行している場合には、棺を炉に入れる前に勤行と焼香があります。
地方慣例によっては、式よりも前に火葬してしまう『前火葬地域』があります。この場合は『骨葬』と言って、遺骨をもとに式がなされます。
❼骨上げ
火葬後、遺族・親族が作法や風習などに則って遺骨を骨壺に納めます。
❽散会
一般的な葬式では、式後に慰労もかねて会食の席を設けることもありますが、一日葬では省略する場合が多く見られます。

【一日葬のメリットとデメリット】
〖メリット〗
○遺族や会葬者の負担が軽減される
2日間にわたって行われる一般的なお葬式に対して、一日葬の場合は会葬者がその施行日のみに集約されるので、遺族や近親者の対外的な労力や精神的な負担も少なくなります。また会葬者にとっても、定められた日時のみに会葬することで、事前の弔問などを省くことができます。
○通夜の飲食費が抑えられる
一日葬では通夜を行わないため、『通夜振舞い』の会食接待が省かれます。不特定多数への飲食の提供は、数量の把握が難しいこともあり、この作業が減ることで負担を大きく減らすことができます。
○火葬式よりは故人とのお別れを丁寧にできる
火葬のみを行う『火葬式(直葬)』もありますが、通夜の会葬者を念頭におく必要がない一日葬は、式の前日にゆっくり故人とのお別れの時間が取れます。また直葬や家族葬とは異なり、一般の会葬者も式に来てもらうのであれば、それなりの社会的対応も果たすことができます。
○友人・知人も参列できる
訃報の範囲によっては、近隣の方々,会社関係者,友人・知人にも来てもらうことができますので、これは『告別式』の施行を営んだことにもなります。
〖デメリット〗
○故人を送るのに慌ただしい印象を与える可能性がある
通夜は葬儀・告別式の前日の夜に営まれますが、一日葬の場合は通夜と葬儀・告別式を1日にまとめて行うため、会葬者にとっては指定の日時のみの会葬になります。
親しい人の中では、通夜に赴きゆっくりと弔問したい、また故人としみじみと対面したいという希望もあります。一日葬ですと、遺族の方々に対して充分に言葉をかけることができなかったという声もあります。
○そこまで費用が安くならないこともある
通夜,葬儀・告別式と一般的には2日間における儀式を1日にまとめた一日葬であるからといって、費用が半減するかといえばそうとは限りません。
通夜振舞いにかかる対外的な接待費用のように確実に減らせる費用がある反面、会場準備費用や棺・祭壇の費用,お布施などといった、変わらない項目もあるからです。
○一日葬でも2日間の使用料を取られる場合がある
一日葬は1日で葬儀・告別式と火葬まで行いますが、前日の安置から式場使用料が発生するところもあります。また会葬人数によっては、設営準備が前日になることも多く、その場合の式場使用料などは2日分と変わりません。通常の斎場・式場の使用料は、前日の午後~当日の出棺、設営撤収までの時間が設定されています。
○寺院・僧侶によっては一日葬に対応してもらえない可能性がある
葬送儀礼の仏教対応では、司祭者としての僧侶において通夜も重要な式目としていることもあるので、その省略をお願いすること自体を否定する考え方もあります。また、時間や回数が省かれたことによって『御布施』の額が前後することはありません。当然、戒名などの授与に関しては、直葬や家族葬,一日葬だからという特例もありません。菩提寺がある場合は、まずは相談として一日葬を行ってよいかを伺ってみるのはいかがでしょうか。
○声を掛ける範囲が難しい
一日葬は、遺族の心労や金銭的な負担を少しでも軽減することを目的として選ばれることがほとんどで、施行規模も縮小されたものが一般的な考え方です。
そのため、訃報連絡の範囲を考えた上で一日葬を選ぶことになります。通夜に行くべきか式に行くべきかを戸惑っている会葬予定者にとっては、日時指定された方が迷わないで済むこともあります。とはいえ、広く声を掛けすぎても、当日の式が混乱することにもなりかねませんので、声を掛ける範囲はよく検討しましょう。
○参列・会葬できなかった方々への対応が増える
一日葬はその日時のみの公示になりますので、都合がつかずに参列できない弔問者が出てくる可能性は高くなります。そのため、式後の数日間はその対応に追われてしまう場合もあります。

【一日葬の費用相場】
一日葬といっても、訃報連絡の範囲によって会葬者の数の増減がありますので、その施行規模は千差万別です。ただ一日葬を行う事由が経費軽減を第一に考える場合は、やはり規模は小さなものとして100名以内の会葬(参列者30名・一般会葬者70名など)の場合、100万~150万円位を目安にしておくとよいでしょう。これは祭壇やお布施,接待(香典返し・会葬御礼・飲食提供)などによって大きく変ります。特に宗教的な御礼は、一日だからといって半額になることはないでしょう。

【最後に】
一日葬は新しいお葬式のスタイルとして、合理的な印象がありますが、単純に「通夜の会葬や宗教儀礼など」を省くだけというものではありません。
一日葬でもその『前日』は必ずあり、それをどのように過ごすかが重要です。