直葬

家族構造や価値観の変化などを背景に、〖直葬〗と呼ばれる葬送方法を利用される方は年々増加しています。
一般的に安く済ませることができると考えられる直葬ですが、実際のところ費用はいくらくらい掛かるものなのでしょうか。直葬は『最もシンプルで費用負担の少ない葬儀』と言われますが、家庭によっては決して軽い負担というわけではありません。
そこで今回は〖直葬〗の費用に関して解説します。
【直葬(火葬式)とは】
直葬とは一般的に『通夜式や葬儀式・告別式を行わず火葬のみを行う葬儀形態』のことで、『火葬式』や『出棺葬』と呼ばれることもあります。直葬は、次のようなパターンがあります。
①葬祭ホールなどで故人と対面、お別れを行ってから出棺し、火葬場で火葬を行う。
②遺族は直接火葬場に集合し、棺の到着後に短いお別れをしたのち火葬を行う。
③故人の関係者は火葬に立ち会わず、火葬後に葬儀社から家族へ遺骨を引き渡す。
①と②については、火葬場の炉前で僧侶に読経をしてもらうケースもあります。なお、さまざまな葬儀形態の中で、通夜や告別式などを行わない形式の葬儀のため、通常であれば直葬は最も費用的な負担が少ないと言われています。
また直葬は『ちょくそう』だけではなく『じきそう』と読まれることもあります。
直葬では火葬の際、ごく限られた親族のみ立ち会って行うことが多くなります。
遺族側の事情などにより、関係者は故人の火葬に立ち会わず、火葬後に葬儀社から家族に遺骨を引き渡す方式で行う場合もあります。
【直葬の費用相場と費用の内訳】
ここでは直葬の費用や相場について紹介します。
〖直葬に掛かる相場とは〗
直葬に掛かる費用は約20万円が相場と言われています。この金額は葬儀社に支払う費用と、火葬場に納める火葬料金の合算です。
ただし、家族の希望で、オプション的な商品,サービスを追加した場合や、遺体の状態、利用する火葬場などによって、直葬であっても40万円以上の費用となることもあります。
それでも葬儀費用の全体的な平均相場が約195万円と言われていることに比較すると、直葬は費用面で負担が軽いということが分かります。
〖直葬の費用内訳〗
次に直葬に掛かる費用にはどのような項目があるのか、主な内訳を見ていきましょう。
〖寝台車や霊柩車の費用〗
寝台車は、病院などの死亡場所から自宅や葬儀社の霊安室などへ故人を搬送するために使用します。
霊柩車は、自宅や葬儀社の霊安室などから火葬場へと霊柩(故人が納められた棺)を運ぶための車です。
寝台車も霊柩車も基本的に距離に応じた料金設定となっていて、10km未満の走行距離であれば、それぞれ約1万円~2万円が相場と言われています。
霊柩車の基本料金は0〜10kmで決められているので10km未満の走行距離なら約1万円~2万円が相場と言われています。
その後は10kmごとや20kmごとなどの距離によって追加料金が掛かります。
〖安置費用〗
葬儀社の霊安室や遺体保管専門施設を利用する場合には、安置費用が必要となります。安置費用は1日約1~3万円が相場と言われています。施設の設備内容などで、値段に幅があります。
〖ドライアイス代〗
亡くなってから火葬を行うまでの間、遺体を保全するためにドライアイスが必要になる場合があります。ドライアイス代の相場は1日分で6千円~1万5千円程度と言われています。その時の気温や故人の体格などによっても使用量が違うため値段に幅があります。
〖火葬費用〗
火葬費用は公営の火葬場の場合、その自治体の住民であれば無料~5万円ほど、民営の火葬場では7万円~8万円くらいからが相場と言われています。
公営の火葬場はその自治体に住んでいる住民が利用できる施設で、住民であれば無料で火葬ができる場合があります。
〖棺代〗
棺にもいろいろな種類があり、3万円~数十万円が相場と言われていますが、直葬では3万円~5万円程度の棺が使用されるケースが多いようです。
〖骨壷代〗
骨壺は種類により値段もさまざまで、1万円前後~7万円を超えるものもあり、値段に幅があります。火葬費用の中にシンプルな白壺が含まれている場合もあります。
〖直葬の費用が変動するポイント〗
直葬でもさまざまなケースがあり、費用は変動することがあります。変動する主なポイントも把握しておきましょう。
①亡くなってから火葬までの日数
安置費用やドライアイスが日数分必要となり、亡くなってから火葬までの日数が長くなるほど料金が増加します。
②寝台車、霊柩車の走行距離など
寝台車や霊柩車は走行距離に応じた料金設定であるため、長距離になればなるほど料金が増加していきます。また深夜や早朝、高速利用も対応してくれますが、割増料金となる点も要注意です。
③火葬場の料金
火葬場の料金は公営か民営かによって大きく変わります。一般的に、公営の火葬場の方が価格は低く設定されており、火葬費用が無料のところもあります。
ただし公営の火葬場でも市内料金と市外料金で分かれていたり、火葬場を管轄する自治体の住民かどうかで利用料金が変わることが一般的です。

【直葬のメリットとデメリット】
直葬にはメリットもあればデメリットもあります。確認してみましょう。
〖直葬のメリットとは〗
・一般葬や家族葬と比べて費用的な負担が軽い
・一般葬や家族葬と比べ、各方面への連絡、諸々の準備や手配など、家族として行うことが少なく、日程的にも短く済むため、身体的負担が軽くなる
・直葬はある程度決まった内容になることが多いため、遺族が決めなければならないことが少なく、葬儀の打合せにおける時間的・精神的な負担が軽減される
・一般会葬者に気を遣うことがないという点で、心理的負担が軽くなる
・直葬では葬儀にかかる日数や時間が短いため日常生活への影響が少ない
・直葬では限られた身近な親族が参列し葬儀自体の時間も短いため遺族の精神的負担を軽減できる
・近親者だけの葬儀なので、他の参列者への対応も最低限で済むため、落ち着いて故人とお別れすることができる
〖直葬のデメリットとは〗
・直葬後、訃報を知った後日に弔問される方がいた場合、その都度対応しなければならず、負担となる
・簡素な葬儀スタイルであるため、抵抗を感じる人もいる
・菩提寺がある場合、直葬で行うには菩提寺の了承を得る必要がある
・菩提寺に無断で直葬を行ってしまうと、納骨時などでトラブルに発展することがある
・最後のお別れはごく短い時間になることが多く、「あっという間に葬儀が終わった」という寂しさや後悔が残ることがある
・一般葬や家族葬と比べて、香典による収入が期待できない
〖直葬のその他の注意点〗
ここでは直葬を行う場合の主な注意点を解説します。
①家族・親族の理解を得ておく
直葬は、なじみのある葬儀スタイルではないため、批判的な意見を持つ方がいることも考えられます。主だった親族については、直葬を行うことについて充分な説明をしておくことが大切です。
②菩提寺の了承を得ておく
先にも少し触れましたが、菩提寺がある場合には、基本的に菩提寺の了承を得ておかなければ直葬を行うことはできません。
*特に菩提寺にお墓がある場合には、無断で直葬を済ませてしまうと、納骨を断られる可能性がありますので要注意です。
菩堤寺と付き合いがある場合、寺の考えも尊重しないといけないため、しっかりとした葬儀を行っていないお骨は、納骨を断られる場合があります。
また戒名が必要と考える宗派の場合、戒名がない故人は受け付けてもらえないことがあるので注意しましょう。
「菩提寺はあるが直葬を選択したい」といった場合は、事前もしくは葬儀社との打ち合わせの段階で必ず菩提寺にも連絡し、事情を伝えて相談しましょう。
③総額でいくら掛かるのか確認する
葬儀社などが運営するWebサイトや新聞折り込みの広告などで『直葬〇万円~』と格安の料金を謳っている葬儀社もありますが、『~』と付記してあるように、場合によってはそれ以上の費用が掛かる可能性がありますので注意が必要です。
総額でいくら掛かるのかを必ず確認しておくことをお勧めします。また追加される可能性のある費用項目も併せて確認しておきましょう。利用する火葬場によって金額が異なる火葬費用など、変動する費用は提示された料金に含まれていないことが多いので注意が必要です。
*極端に安い料金プランは特に、必要なものが含まれているかどうか注意して見るようにしましょう。
④遺体を安置する場所を確保する
故人が亡くなったあと24時間以上は遺体を安置することが法律で定められています。さらに、火葬場の予約ができていないようであれば火葬できるまでの期間も安置できる場所を探さなければいけません。
火葬まで時間がかかるようであれば、ドライアイスを使って遺体が傷まないようにしなければならない場合もあります。
火葬場が混んでいて火葬できないなど、火葬するまで数日ある場合は葬儀社に相談することがお勧めです。
【最後に】
今回は直葬の費用に関して解説しましたが、いかがでしたか。
直葬は葬儀に掛かる費用を抑えたい場合には最も適した葬儀形態です。
ですが、家族や親族の理解を得ること、菩提寺の了承を得ることなど、直葬を進めるためにクリアしておくべき課題もあるので、忘れないようにしておきましょう。
火葬が終わるまでのスケジュールを葬儀社に確認する、遺族・親族内でもお互いの意向を話し合うなど、よく検討してから行うようにしましょう。
直葬を検討する際には、今回の内容を参考にしてください。